「兄さん、朝ですよ? 起きてますか?」 ドア越しに、すももの声が聞こえてくる。 「うん、多分……起きてるとは思う」 「……はい? その、何なんですか、多分、って曖昧な返事は?」 「ん……まあ、色々とな」 「とにかく、朝ご飯も出来ますから、着替えて下りてきて下さいね」 「ああ……」 返事をすると、リビングの方へ下りていったであろうすももの足音が小さく聞こえた。 ――朝になってしまった。夜寝て、目が覚めたらあれは全て夢でした、とかいうオチなのかと思ったら鮮明に覚えていることを考えると、昨日のハチ・ラブレター事件はどうやら夢ではないらしい。 「ハチがラブレター、か」 俺だってもらったことないのにな。――って、こんなこと言ったら春姫に怒られそうだ。
ハチと月の魔法使い SCENE
1 「微笑みのハチ」
「ええっ!? ハチさんがラブレターを!?」 通学路の途中、万が一夢だったことを考慮して話していなかったすももに、昨日のハチ・ラブレター事件のことを話してやった。 「まあ一応手紙をもらった、ってだけでラブレターって決まったわけじゃないんだけどな」 「でもでも、その子の様子からしてもきっとラブレターですよ! うわあ、ハチさんにもついに彼女さんが出来るんですね!」 すももが自分のことのように嬉しそうにはしゃいでいる。ハチの幸せを純粋に心から喜んでいるんだろう、そういう奴だ。自分の妹ながら本当によく出来た妹だな。――俺も、もうちょっと純粋にハチを祝福してやろうかな…… 「そういえばさ、その女の子、柄の先が三日月の形をしたマジックワンドを持ってたんだけど、知ってるか?」 「先が三日月、ですか……? うーん、普通科と魔法科が合同のクラスになった時、私のクラスにはいませんでしたね……伊吹ちゃんに聞いてみればわかるかもしれませんけど」 「そっか……」 何となく、目を引くマジックワンドだったから、もしやとは思ったけど。
「おっはよー、雄真、すももちゃん」 いつもの合流地点近くで、準の声がした。 「お早うございます、準さん」 「お早う、準……」 俺は言葉に詰まった。準の横に見知らぬ男が立っている。誰だろう? 変な言い方だが、随分顔の崩れた奴だ。朝から気持ち悪い笑顔を明後日の方向へ振り撒いている。 「準さんのお友達の方ですか?」 すももも同感だったようで、準に聞いてみている。――が、準はその瞬間、深いため息をついた。 「何言ってるのよ、二人とも。――これ、ハチよ」 「な……なにぃ!?」「え……ええっ!?」 言葉は違えど、ほぼ同じタイミングで俺達は驚きの台詞を挙げてしまった。――ハチ? これがハチ? 確かに昔からだらしない顔はしていたが、ここまでグニャグニャな顔あいつしてたのか!? 雨が降ったらそのまま溶けて流れていきそうなくらいグニャグニャな顔だぞ!? 「――あたしも最初は目を疑ったわ。でも、よーく観察して、よーく声を聞いてみたら、ハチだったんだもん」 「おはよう〜、ゆうま〜、すももちゃ〜ん……でへへへ」 得体の知れない笑顔男が俺達に挨拶してきた。――成る程、頑張ればハチに見えないこともない。 「昨日は石化して終わっちゃったけど、夜あたりになって実感が沸いてきた、ってところじゃないかしら」 「成る程な。――いやしかし……」 キモい。気持ち悪すぎる。出来れば一緒に歩いて登校したくない。 「ん〜? どうしたんだよゆうま〜 そんな変な顔しちゃってよ〜……でへへへ」 「ええい、変なのはお前の顔の方だ!! 近づいてくるな!!」 気付けば横を通り過ぎていく人が皆、「あの寄生物は何だ」見たいな顔でこちらをチラリチラリと見ていくじゃないか! 「あ、あの……とりあえず、学校、行きませんか?」 同じく視線をヒシヒシと感じていたすももの提案に、俺達は移動を開始した。――が、 「でへへへへ……」 前を俺達三人、後ろを一人ドロドロな笑顔で時折怪しげな声を発しているハチ。――背後の気配が非常に恐怖だ。 「――今日だけ走って学校に行きたくなったりしないか?」 提案してみた。 「気持ちはわかるけど……やめておいたほうがいいわよ」 ところが、同意してくれると思った準に、あっさりと否定されてしまった。 「? 何でだ?」 「いい? あたしと雄真は、ハチの足からは多分逃げ切れるわ。でも、この中で一番足が遅いのは、すももちゃんでしょ?」 確かにすももは足が遅い。一つ間違えたら俺の早足と変わらんのではないかと思う程だ。 「つまりね……」
「……せーのっ!」 俺達は合図と同時に、一斉に走り出した。 「お、お〜い、何で急に走り出すんだよ〜、待ってくれよ〜……でへへへへ」 ハチが、そのドロドロな笑顔のまま、走って追いかけてくる。――恐怖だ! 早朝の恐怖だ! 「おい、何だあれ!」 「高校生三人が、変質者に追いかけられてるぞ!」 「誰か、警察を呼べ!」 そんな声が通り過ぎる人の間から聞こえてくるような気もしたが……とにかく今はそれどころじゃない! 逃げるんだ、なんとしても! 「はぁ……はぁ……す、すもも、何してるんだ、早くしろ……!」 「そ、そんなこと言ったって……はぁ……はぁ……わ、わたしだって、精一杯、走ってます……!」 次第に縮まっていく、すももとハチの距離。 「はぁ……はぁ……ま、待って下さいよ、兄さ〜ん……!!」 くっ、どうする俺!? ここで速度を落したら確実に俺もハチのエサになってしまう。しかし、すももを放っておくわけにも……!! 「でへへへへ……すももちゃん、つ〜かま〜えた〜」 「きゃああああっ!!」 しまった、そうこうしてる間にすももがハチに捕まってしまった! 「に、兄さ〜ん!!」 「くっ、すもも、今助けにいくぞ!!」 俺は足を止め、振り返り、すももを助けにいこうとした――その時だった。 「いたぞ!」 「あれだな、通報があったのは!」 サイレンを鳴らしながら、パトカーが数台激しい音を立てて止まると、中から拳銃を持って出てくる警官達。そして…… 「撃てーっ!!」
「……いや、やってきていきなり射殺、はないんじゃないか?」 映画のアメリカンポリスじゃあるまいし。 「それはそうだけど……でも、警察騒ぎになって、「友達の顔が変だったので逃げたんです」何て理由だったらあたし達にまで責任がきちゃうわよ」 「……それはそうかも」 そう、今のハチの顔なら、その位の事件になら発展してしまいかねない。――かくして俺達は逃げるのを諦め、後ろに恐怖を感じつつ、登校を続けることになった。 「ああ、そういえば」 ハチの気持ち悪さですっかり忘れていたが…… 「結局、手紙の中身って、どんな内容だったんだ?」 あの様子からしても、多分良い内容だったんだろうけど、一応具体的な中身は知っておきたい。 「ああ、あたしもそう思ってね、確認をとってみたんだけど……」 そう呟くように答えると、準は軽くため息をついた。 「……どうした?」 「ハチね……どうやらまだ肝心の中身を読んでないらしいのよ」 「……はぁ!? 読んでないって、何じゃそりゃ!?」 「あたしも、今のハチの状態から詳しくは解読出来なかったんだけど……何でも、実際開けようと思うと緊張しちゃって、どうしても開けられないんですって」 ということは……ハチはまだ妄想だけでエイリアン化したのか!? 「凄いですね、ハチさん……」 いや、関心してる場合じゃないぞ、我が妹。 「いやしかし、中身を見てないってのはまずいんじゃないか?」 「そうですよね……「連絡下さい」ならともかく、「何処に何時に待ってます」じゃ予定を過ぎちゃうかもしれません」 「とにかく、何とかあたし達でハチの手紙、開けさせましょ」 「やれやれ、世話の焼けるエイリアンだな」 「あはは……兄さん、一応ハチさんは人間ですよ」 その言い方もどうかと思うぞ、すもも。 かくして俺達はそんな話をしている間に無事に学校にたどり着くことが出来た。――ちなみに校門の所で待っていた春姫が後ろのハチをモンスターと勘違いして真剣な面持ちでソプラノを構えだした、というのは余談だ。
「で、結局まだハチは手紙、開けてないわけ?」 柊が呆れ顔でそう切り出した。――時刻は昼休み。「ハチ・ラブレター作戦会議」と題し、俺、春姫、準、ハチに加え、バイトが休みだった柊を加え、Oasisでテーブルを囲んでいた。 というか、お前は何処から情報を手に入れたんだ、柊。まあいいけど。 「もう大分時間も経過したし、そろそろ開けられるんじゃないのか?」 「そう思う?」 準はそう言うと、相変わらず「でへへへ」笑っているハチに、例の手紙を持たせた。すると―― 「……え?」 あれだけグニャグニャだったハチの表情が一瞬で無くなった。いや、無くなったのも一瞬。 「た、高溝くん!?」 春姫が心配するのも無理はない。次第にハチの顔からは汗が滝のように流れ始めたのである。 「お……おおおおお……手紙……俺への手紙……お、俺へ……うおおおお……」 ハチの顔つきがどんどん強張っていく。あのドロドロの笑顔の時とはまた違う意味でエイリアンの様だ。 「開ける……開けてみせる……お、俺への……うおおおおおお」 「――って言い続けるだけで、一向に手が動かないのよ」 準が呆れ顔で言う。――成る程、実験済みだったのか。 「それならさあ、あたし達で開けちゃったほうがいいんじゃない?」 「駄目だよ杏璃ちゃん。杏璃ちゃんが開けたら、相手の女の子に失礼になるんじゃないかな」 「あ……そっか」 「でもまあ、柊の気持ちもわからんでもないけどな」 この会話の間もずっと手紙を持ったまま強張っているハチ。このままではキリがない。 「ちなみにね」 準がハチの手からパッと手紙を取る。すると―― 「でへへへへ」 「一瞬で元に戻るのよ」 俺達はため息混じりでハチを見た。いや気持ち悪いからあまり見たくもないんだが。 「なんかハチ、安物の玩具みたい」 「いや、これでは子供は楽しめないぞ」 って、そんなことはどうでもいいんだ。とにかく早く開けさせないと。 「おや? そこで奇怪な表情をしているのは、高溝殿か?」 と、声のした方を見てみると、そこにいたのは上条兄弟。 「きゃ〜☆ 沙耶ちゃん、久しぶり〜!」 「あ……はい、お久しぶりです、準さん」 準が嬉しそうに上条さんに話しかける。――そういえば準は俺や春姫、柊と会う機会はあっても、中々上条さんと会う機会は少ないからな。 「っていうか信哉、よくアンタこれがハチだって気付いたわね」 柊が怪訝な表情で信哉を見る。その点に関しては俺も同感だ。 「いやなに、俺の心眼がそう告げていたのでな」 心眼って。 「それで、何故高溝殿はそのような表情をしているのだ――ん?」 信哉の視線が、例の手紙に移る。 「気付いたか、信哉。それな、昨日ハチが下級生からもらったやつなんだ」 「そうか……ついに高溝殿も果たし状を受け取るような男になったのだな!」 ――はい? 果たし状? 「わかる……俺にはわかるぞ高溝殿、その笑みは、これから強者との戦いを控えての嬉しさからくるものだろう!」 やはり信哉は何処かがずれていた。 「兄様……果たし状でしたら、あのような可愛らしい便箋には入ってこないのでは……」 「何を言うんだ沙耶、一年前俺がもらったものは、あのような色の便箋に入っていたぞ」 何だか、信哉の過去とか日常風景が凄い気になってきた。どんな生活なんだよ。――いや、今はそれよりもハチに手紙を――うん? 「あ……あ……」 「ハチ? あんたどうかしたの?」 今まであのドロドロの笑顔を見せていたハチの表情がまた震えるような表情に変わっていた。そして…… 「は、は、は、は、果たし状だって〜〜〜!? そそそそ、そんなぁ〜〜〜!!」 信哉の言うことを鵜呑みにしていた。 「ゆゆ雄真、おおお俺どうすればいいんだ!?」 「落ち着けハチ! まだ果たし状と決まったわけじゃないだろ!」 というか、その可能性の方が断然低い。 「ふむ……高溝殿、あれなら俺は同行しても構わんが?」 「ほ、ホントか信哉!? お、お前いい奴だな〜!!」 「何を言う高溝殿。友の窮地を助けるのは当たり前のことではないか」 ハチと信哉の友情ゲージが一気に最高潮まで達した。――って、そんなのを感じてる場合じゃないな。 「とにかく、ちゃんと開けてみるのがいいんじゃないかな、高溝くん」 春姫が上手い具合にハチに開けさせるように話をもっていった。 「そうだな……よし!」 意を決したハチがテーブルの真ん中にあった手紙を手に取った。すると…… 「お……おおおおお……手紙……俺への手紙……お、俺へ……うおおおお……」 「エンドレスなのかよ!?」 結局あの状態になってしまった。 「あーもうじれったい! もう我慢出来ない、あたしが読んであげるわ!」 柊がハチの手から手紙を奪い取ると、封を開け、中の手紙を取り出した。 「えーと……」
「高溝先輩へ。 突然の行為、お手紙、大変申し訳ございません。 実は、一月前、偶然あなたを見かけた時から、お慕いしておりました。 一度、二人だけでお話する機会をいただけませんでしょうか。 明日の放課後、魔法科校舎の裏でお待ちしております。 魔法科一年 月邑 雫(つきむら しずく)」
「…………」 柊が読み終えた瞬間、一斉に沈黙が広がる。そして浸透してくる手紙の内容。 「それって……」 「やっぱり……」 「果たし状ではないか高溝殿!!」 信哉の言葉に、全員がすっ転びそうになった。 「信哉くん、今のは流石にどう聞いてもラブレターにしか……」 「いや準殿、俺が一年前もらった果たし状は中身もそういったものだったのだ」 ああヤバイ、凄い気になってきた。 「なあ信哉……その、一年前、何があったんだ?」 聞いてしまった。 「一年前、似たような便箋に似たような文章でとある箇所に俺は呼び出されたのだ。覚悟を決めて俺が指定された場所に向かうと、そこにはならず者どもの集団が待ち構えていた」 つまり、相手としては信哉を騙して呼び出したつもりだったのに、信哉は最初からやる気満々で向かっていた、と。 「一対一の争いならば負けることなどなかったのだが、流石に多勢に無勢でな。少々危うかったのだが、沙耶が加勢にきてくれたのだ」 「え? 上条さんが?」 「あ、兄様、そのことは……」 「加勢にきてくれた沙耶のおかげで形成は逆転。相手の主格を追い詰めた時の沙耶の凛々しい姿は今でも完璧に俺の目に焼きついているぞ。そして最後に沙耶は相手の主格に向かって一言――ゲフッ!!」 上条さんの一撃が、信哉にモロにヒットした。 「兄様……口が過ぎます」 「何を言うか沙耶、俺はお前の活躍を誇りに思っているのだ! 更にあの戦いの後、沙耶に付けられた異名が――グッハアアッ!!」 「兄様、ちょっとこちらへ」 「待て沙耶、俺は沙耶の武勇伝をだな!! 沙耶、落ち着いてくれ!! 沙耶、沙耶〜〜〜っ!!」 信哉は、上条さんにズルズル引きづられてOasisを後にした。 「……というか、上条さんに付けられたっていう異名が凄い気になるんだが」 「あたしも……気になるかも」 しばらく俺達は、信哉が引きづられて行く様子を眺めていたが、 「――そんなことよりもハチよハチ! バッチリラブレターだったじゃない!」 柊の一言で、本題に戻ることが出来た。 「私達がその子に会ったのは昨日だから……待ってるのは、今日の放課後、ってことよね?」 「段々現実味を帯びてきたな……つまり今日告白される、ってことか」 「あ〜あ、ついにハチにも彼女が出来ちゃうのね……」 俺達の台詞に、ハチはボーっとしていたが、やがてワナワナと震えだした。 「俺に……俺にも……彼女が……うおおおおおっ!!」 「ちょっと、急に大声出さないでよね!」 「やるぞ……俺はやってやるぜえぇぇぇ!!」 ハチが立ち上がって、握り拳を見せた、その時であった。 「あらあら皆さん、随分楽しそうですね」 そこに現れたのは、いつも何処からともなく登場する小雪さんだった。 「あ、小雪さん。実はハチの奴がラブレターもらいまして、それで」 「高溝さんが、ラブレターを……」 そう言うと小雪さんは、じっとハチの方を見つめだした。 「――小雪さん?」 更に見つめること十数秒。そして…… 「……ふふ」 「え? え? な、何!? 何なんスか、小雪さん!?」 うろたえだすハチに向かって小雪さんは、 「高溝さん。……ファイトです♪」 そう言い残して、スタスタと行ってしまった。 「……意味深だな」 「……だね」 「というか、小雪先輩がああいうことする時って……」 不幸を先見した時じゃなかったっけ?――誰もがそう思ったが、流石に口には出せなかったのだった。 「ハチ。――葬式には行ってやるからな」 「殺すんじゃねええぇぇぇ!!」
「ほら、あそこで待ってるの、そうじゃない?」 放課後になって、再び集まり、魔法科校舎裏側手前でチラリと様子を伺うと、昨日の子が壁に軽くもたれ掛かるようにして立っていた。 「そうだな。――よし、ハチ行け!」 「おおお、おう」 ハチがロボットのように歩き出した。やがてその姿が視界に入ったらしく、相手も軽く頬を染めながら頭を下げた。 「それじゃ、私達は帰ろうか」 「えー、何でよ春姫? これからがいいところじゃない!」 「駄目だよ杏璃ちゃん。こういう時は、二人っきりにさせてあげなきゃ」 「――まあ、春姫ちゃんの言うとおりかもね。あたし達は退散しましょ。二人のことは、明日た〜っぷり聞けばいいんだし」 「ま、それもそうね〜♪」 そうそう、俺と春姫が付き合いだした頃も随分としつこく聞かれたっけ。――チラッと横を見ると春姫を見ると、目が合った。同じことを考えていたのだろう。お互い、照れながら少し笑った。 「高溝くん、上手くいくといいね」 「うん、そうだな」 上手くいって欲しい。色々あったがそれは本当にそう思う。ハチが俺達の友人であることに違いはないし、何だかんだでいい奴ではあるのだ。 「これで、私達へのからかいも、少しは減るかな?」 「かもな。――人をからかうってのもちょっとやってみたかったし」 「あははっ、そうかも」 ――それから、準と別れ、春姫と柊を寮まで送った後、一人で家へと向かっていた。 「うわ、最近は暗くなるのも早くなったな」 空を見上げれば、薄らと月も見える。――今夜は三日月らしい。 「そういえば……あの子のワンド、三日月だったし、名前も月邑、って言ったっけ。何か関係あるのかな?」 帰り道、不意にそんなことが頭を過ぎったのだった。
<次回予告>
「大丈夫ですよ高溝先輩、こうして会えたんですから」
ついにハチにも春が来た!? 可愛い後輩からの告白に、我を忘れて浮かれていくハチ。
「い……今一瞬、この世の全てが、信じられなくなったぞ……」
周囲の寒い視線にも負けず、幸せへの階段を上っていくハチ。 いいのか!? これでいいのかハチ!?
次回、「ハチと月の魔法使い」 SCENE
2 「季節忘れの春風」
「でも、世界平和の為だ! 許せ春姫、こんな俺を許してくれーっ!!」 「ゆ、雄真くーん!!」
お楽しみに。 |