「まずは……そうね、どうやって高溝くんを放課後連れ出すか、よね」
 放課後、Oasisの一角。相沢さん、梨巳さん、杏璃に何故か俺を加えたハチ断罪委員会……じゃなかった、ハチ特訓委員会のメンバーは、早速話し合いを開始していた。
「誘拐でいいんじゃない? 後ろからビニール袋被せて口を塞いでシミュレーションホールまで運ぶとか」
 真顔でその提案をしてくる梨巳さんは相変わらず厳しかった。
「普通に釣竿の先に可愛い女の子の写真ぶら下げておけば釣れるわよ、ハチなんて」
 杏璃の意見も否定出来ない辺りがハチの凄い所だと俺は思う。
「二人の意見でもいいんだけど……もっとこう、高溝くんがショックを受けるようなやり方がいいわ」
「一理あるわね」
「確かに、その位しないとあたし達気が済まないかも」
 そして今日の相沢さんは物凄い怖かった。この人は伊達で生徒会長になったわけじゃないということが痛い程わかった。敵に回すにはかなりの覚悟が必要だ。
「小日向、黙ってないで意見を出しなさい」
「……あー」
 皆さん気付いてないんですか、俺乗り気じゃないって。……でも逃げられそうにもないので俺なりに考えてみる。
「……ラブレターっぽい手紙で誘ってみるとか」
 と、適当に言ってみると、三人は軽くお互い目を見合わせる。
「面白いわ、それでいってみましょう」
 採用かよ!――相沢さんは満面の笑みだった。
「それじゃ、それっぽい文面を考えないと。清書書きは後でするとして……」
「全体的に曖昧にした方がいいわね。どんな追求をされても言い訳をして逃げられるように」
「それでいてハチが浮かれる文章ね……とにかく可愛らしい感じにして誤魔化せばいいんじゃない?」
「どの辺りまでなら書いて大丈夫かしら。「あなたのことを想っています」はセーフよね?」
「そうね。どう想っているか明言してないわけだし」
「それなら、いつも見てます、とかもアリじゃない?」
「最近胸がどきどきしています、もアリよね。何も高溝くんにどきどきしているって明言しなければ」
「誰かに恋をしていますか、って聞くのもいいんじゃない? 私達が別に高溝のことを好きなわけじゃないんだし」
「…………」
 さて、俺はさり気なくお暇しようか。空気になってきたし。
「小日向、ドリンクバーのおかわり。アイスミルクティー」
「あ、あたしも。あたしオレンジジュースでいいわ」
「私もお願い出来るかしら。コーヒーで」
「…………」
 違うんだよ、俺何もジュースのおかわりに立ったわけじゃないんだよ。……とは言えないので大人しく三人分のコップを持ってドリンクバーの所へ。
「あ、雄真くん雄真くん、ちょっといい?」
 と、コップを持って移動中に俺を呼び止めてきたのは、パティシエールの舞依さんだ。
「? 何ですか?」
「最近のハーレムキングってさあ、尻に敷かれる傾向にあるの?」
「知りませんよそんなこと!! 俺を観察する暇があったら仕事して下さい仕事!」
 というかそれが聞きたいが為にわざわざフロアまで出てきたのかこの人!?



ハチと小日向雄真魔術師団
SCENE 14  「幼女と熟女と変態とカジキマグロな男」



「……ん?」
 翌朝、登校時。俺の携帯にメールが届く。
「春姫からか」
「姫ちゃん、何かあったんですか?」
「ああ、今日は校門の所で待てないから、先に行っててくれって。何でも杏璃に捕まってるらしい」
 まあ、何だかんだであの二人は親友だからな。頼まれて断れないこともあるだろう。……親友、か。
「…………」
「…………」
「? おい、どうしたんだよ雄真も準も急に黙っちまってよ」
「いや、何でもない」
「別にあたしも何でもないわ。ただ、一口にそうでもいろいろあるわね、と思っただけ」
「は……?」
 チラリと準と目が合う。――さっきの言葉からしても、同じ事を考えていたらしい。まあその、春姫と杏璃の間柄と、その差というか。
「……俺達とハチ、本当に親友と呼べる間柄なのか?」
「親友初めて何年も経過して辿り着く疑問じゃないけどね。――少なくともキャリアだけならあの二人よりもあたし達の方が上よ?」
「いや、そこあまり自慢出来ないから」
 結論として深く考えたら負け、ということに達したので俺も準もそれ以上考えるのは止めることにした。
 そんなこんなで歩いていると、やがて見えてくるのは校門。
「……ん?」
 先ほどメールを貰ったので、校門に春姫がいないのはわかっていたのだが、代わりにいつもの場所で軽く寄りかかるように立っているのは……
「梨巳さん?」
 最近俺との遭遇が段々御馴染みになりつつある梨巳さんだった。独特のオーラとその可愛らしい顔立ちが上手い具合に重なり、見事にマッチした光景だ。
「誰かを待っているみたいね。誰を待ってるのかしら?」
「……兄さん?」
「毎回毎回疑いの目で見るのはよそうなすもも。そろそろ本気で兄さん悲しいぞ」
 と、一連の流れの後。
「ハッ!」
「それはないな」「それはないわね」「それは違うんじゃないでしょうか?」
「まだ「ハッ!」しか言ってないだろうがあああ!!」
「お前が閃いて言うことなど大方予測出来る。どうせ「もしかして、俺を待っててくれたんじゃ!! ついに俺への愛に目覚めてくれたんだな!!」とかだろ」
「馬鹿にするな雄真、俺がいつもいつもそんなことばかり考えるとでも思ってるのか!?」
「? 違ったのか、今回」
「大方合っている!!」
「もうお前死んだ方がいいな」「一度死んだ方がいいんじゃない?」「お葬式の準備をしておくといいのかもしれませんね」
「酷い……酷いにも程があるわこの人達……」
 と、おかまハチになったという更に一連の流れの後、俺達を発見した梨巳さんが、こちらへスタスタとやって来る。
「お早う、小日向、渡良瀬さん、すももさん、高橋」
「お早う、梨巳さん」
「おはよー」
「おはようございます」
「おう、お早う……ってまま待ってくれ梨巳さん、俺、高橋じゃなくて――」
「さ、行くわよ、小日向」
 ハチのツッコミをスルーし、俺を促す梨巳さん。
「いやあ流石に一応言っておくよ梨巳さん、ツッコミをさせないならボケを入れるのはどうかと」
 俺の指摘に、梨巳さんは軽くため息。
「高溝、校則違反だし」
「え……ええ!? 俺の何処が!?」
「オーラ」
「☆▲×%$#@!?」
 石化。……オーラが校則違反て。学園もう来れないじゃん。
「これでいい?」
「もう何でもいいや……」
 と、本題はそこじゃなくて。
「って、梨巳さん俺に用事?」
「ええ、そうよ。――というわけで二人共、小日向借りるから」
「どうぞどうぞ」
「兄さん……まさか本当に……」
 笑顔で見送る準、疑惑の目のすももを残し、俺は梨巳さんに連れ去られる。少し校門から離れた所で、梨巳さんは携帯電話を取り出す。
「もしもし。――ええ、小日向確保したわ。後はお願い」
 その簡単な通話のみで電源を切る。――俺を確保?
「どういう意味?」
「私が小日向を確保する係で、柊さんが念の為に神坂さんを確保する係。相沢さんが実行する係って昨日決めたのよ。――事実を知ってるあなたが側にいたら万が一ということがあるでしょう?」
 それって、もしかして。
「昨日の今日で、実戦なのか」
「善は急げって言うでしょ。――さ、様子を見るわよ」
 どうやらハチがラブレターという名の偽書を見る所からスタートのようだ。……まあ、その、興味がないこともないので、大人しく梨巳さんと一緒に石化から復活したハチの後をつけ、様子を窺う。――が、ここからの展開は、俺の予想の一歩上を行っていた。
 ハチ、昇降口に突入。自分のクラスの下駄箱へ。
「あれ? 相沢さん?」
「っ!? た、高溝くん!?」
 そこには既に相沢さんがいた。ハチを見るなり、あからさまな動揺を見せる。
「相沢さん、どうしたんだよ? ここ普通科の昇降口だし、そこ、俺の下駄箱――」
「なっ、なな何でもないの! 気に、気にしないでいいのよ? それじゃ!」
 相沢さんはしどろもどろのまま、顔を赤くして、ハチの横を走り去る。
「…………」
 何だか、何だろう。まさかとは思うが。――ハチの横を通り過ぎた相沢さんは昇降口を出ると、辺りを警戒した後、俺達を発見、走ってきた。
「あんな感じでよかったかしら?」
「高溝には十分でしょう。さ、後はこのまま見物ね」
「…………」
 演技でした。あの動揺、しどろもどろな口調、赤面まで。あああ、相沢さんのイメージが崩れていく。知ってはいけない相沢さんを知ってしまったよ俺。というか俺の提案したラブレター作戦は改良されて更にレベルアップしていたということが今わかった。
 一方のハチは、走り去る相沢さんを疑問顔で見送った後、自らの下駄箱の扉を開ける。
「…………」
 開けた瞬間、ハチは固まった。時間にして五秒。五秒経過した後、周囲を確認すると、自分の鞄を開け、素早い動作で鞄に下駄箱から取り出した何かを仕舞う。そのまま靴を履き替え、校舎内へ入っていった。
「上手くいったわね」
「でも高溝くん、ちゃんと中身読んでくれるかしら?」
「多分大丈夫だと思う。ハチの中で今回一人で見つけた物だから。もし自分一人で見れない場合は多分俺か準辺りに相談がいく。だからどっちにしろ今日中にどうにか出来ると思う」
 …………。
「小日向を抑えておいて正解ね」
「流石ね小日向くん、よく研究してるわ」
「してないから! 何だか俺がハチのこと一生懸命調べてるみたいな言い方は止めて相沢さん!」


 そんな朝が過ぎ、昼が過ぎ、放課後になり、小日向雄真魔術師団の練習時間になり、シミュレーションホールにメンバーが集まり、各自ウォーミングアップが始まり、
「…………」
 やけにそわそわしているハチがいたり。
「おい高溝、どうした? トイレか? 漏れそうなのか?」
「違うぜ武ノ塚、俺から漏れそうなのは愛だ! 溢れんばかりの愛情さ!」
「はあ?」
「なあ武ノ塚。――お前、愛ってわかるか。愛。それ即ちLOVE」
「いやお前それ英語に言いなおしただけ」
「例えこの青空が暗黒に覆われてしまったとしても、俺の愛は消えることはないさ! フフッ、あはは、あ〜はは〜☆」
 疑問顔の武ノ塚を他所に、ハチは武者震いをしていた。確かに漏れている。哀れなオーラが漏れている。
「……小日向、何だあれ? なんかあったのかあいつ?」
「武ノ塚、気にしたら負けだ」
 とりあえずはぐらかしておく。説明するのは面倒というか馬鹿馬鹿しいというか。
「――というわけですので、先日お話した通り、今日は何人かのグループに分かれて、グループごとに重点的な練習をしてみたいと思います」
 と、そんな楓奈の説明が聞こえてくる。今日の練習はその楓奈の説明通り、全体練習ではなく、五、六人位のグループに分かれたグループごとの練習らしい。楓奈の説明が終わると、各々のグループに分かれていく。
「…………」
「…………」
 相沢さんがハチに軽く目配せをすると、ハチが満面の笑みで相沢さんの後を付いていく。それを確認すると、更に動き出す人間が数名。――俺、梨巳さん、杏璃、土倉、柚賀さんだ。先頭が相沢さん、数歩遅れてハチ、更に数歩遅れて俺達。無言の移動は無意味な緊張感をもたらしていた。
「高溝のスキップ、気持ち悪いんだけど」
 訂正。梨巳さんは緊張とかしてませんでした。
「違うぞ梨巳可菜美、あれは南米で使用されている雨乞いの踊りだ」
 我が相棒が拍車をかけています。
「じゃあ、儀式的な道具を持たせた方がいいんじゃない?――はいハチ、これ持って」
 杏璃が何処からともなく拾ってきた長い木の棒をハチに無理矢理持たせた。――ちなみにハチは浮かれの方がデカイらしく、持たされるままにその木の棒を持ち、雨乞いのようなスキップを続けている。
「後はフェイスペイントだな。フェイスペイントと言っても色々な種類があるが、大よそのものは飾りではなくその色合いがそれぞれ祈る神への信仰などを表現している場合が主だ。つまりその模様が自分が信仰しているものを表現しているというわけだな」
「いやあそこで真面目に語られてもクライスさん」
「小日向、高溝は何を信仰してるの?」
 表情からは分かり辛いが、すぐさまこの質問をしてくる辺り、梨巳さんはノリノリなんだろうな……
「うーん……宗教関連には手を出してなかった気がするが」
「何も宗教だけに拘る必要はないぞ雄真。自分が愛するもの、大切にしているものなどでも構わん。例えばほら、自分がファンのアーティストの化粧を真似してみたりするだろう? あれと同じような気持ちでいいんじゃないのか?」
「じゃあ、ハチの好きなものってことになるわね。――駄目な意味で色々思いつくわね」
「とにかく女の子が好きだな。ロリコンでもある」
「え……そうなんだ……」
「……俺達の歳でロリコンって、あまりいないんじゃないか?」
 杏璃と俺の会話に柚賀さんと土倉が軽く引いていた。俺と杏璃は当然知っていたし、梨巳さんはその程度じゃ驚かない程にハチの評価が低い。
「でもそうなると、ロリコンのフェイスペイントってことになるわね」
「流石に無理だろ。どんなだよロリコンのフェイスペイントって」
「ストレートで文字でいいじゃないか雄真。「幼女命」とか」
「それ書いている奴がいたら本気で阿呆だぞ……」
「漢字だから、筆ペンがいいわね」
「書いてる!?」
 梨巳さんが移動しながら器用にハチの右頬に「幼児命」と書いていた。――ちなみに書かれてもハチの雨乞いスキップは止まらない。どれだけ浮かれてるんだお前。
「はい小日向、次あなたの番よ」
「ちょっと待って、それって俺にも書けと」
「そう。――小日向は、私だけに書かせるのね。まあいいけど、後で神坂さんに今日小日向と一緒に登校したって伝えるだけだから」
「ズルイな、脅迫かよ!?」
 渋々筆ペンを梨巳さんから受け取る。さて何を書こう。
「……ああ、そうだ」
 どうもハチはロリコンばかりが強調され気味だが、こいつは射程範囲が広いだけで何もロリコンオンリーというわけではないのだ。……つまり、
「……「熟女命」?」
 反対側の左頬にそう俺は書いた。
「ほら次、杏璃の番だぞ」
 そのまま杏璃に筆ペンを手渡す。
「二人共、一応事実を書いてるわね……ならあたしも事実を書かないと駄目よね……これならどう?」
 そう言いながら杏璃はハチの顎に「変態一直線」と書いた。
「はい次、土倉の番よ」
「……ちょっと待て、俺にまで書かせるのか?」
「当たり前。アンタの為にわざわざ書きやすいおでこ、残しておいたんだからね」
 そのまま杏璃は無理矢理土倉に筆ペンをパス。――土倉は数秒悩んでいたが、意を決したらしく、ハチのおでこに文字を書く。
「これでいいか?」
 直後、ハチのおでこには大きく「カジキマグロ」と書かれてあった。
「ぶっ、おまっ、乗り気じゃないクセにセンスあり過ぎだ」
 意味が分からない。何故におでこにカジキマグロなのか。その謎っぷりが笑いを誘う。
「どうせ普通に肉、とか書いても面白みがないとか言い出すんだろ。――はい柚賀さん」
「え!? 私も書くの!?」
 そのまま土倉は最後の一人になった柚賀さんに無理矢理筆ペンを手渡す。
「で、でももう書く場所もないし」
「ワンポイントとかでいいわ。目の下とか」
 梨巳さんにそう言われ、柚賀さんはハチの両目の下に☆のマークを書いた。これだけだったら大したことないが、今までとの組み合わせにより無意味に笑いを呼んだ。
「ぶっ……くくっ……」
 そしてハチは完成した。右頬に「幼女命」、左頬に「熟女命」、顎に「変態一直線」、おでこに「カジキマグロ」、両目の下に☆マーク。――最早変態では片付けられない構図だ。全員必死になって笑いをこらえている。俺、杏璃、柚賀さんは無論、あの梨巳さんと土倉までが必死になって笑いをこらえていた。凄いレベルに達した。というか本当にここまでされて何故ハチは気付かないんだ。どうかしてる所じゃない。
「それじゃ、高溝くん、この辺りで――」
 練習予定場に辿り着き、相沢さんが振り返る。振り返った目の前には、ハチがいるわけで。
「――きゃあああああああ!?」
 ……そして、相沢さんの悲鳴が響き渡った。


「――五人とも、私に何か恨みでもあったのかしら?」
 数分後、ショックから立ち直った相沢さんに、俺達は軽くお説教を喰らう羽目になった。
「ごめん相沢さん……俺達別に相沢さんを驚かそうとしたわけじゃないんだ」
「それはわかるけど……にしても、屑葉や恰来まで一緒になって」
「ごめんね、友ちゃん……」
「……ごめん」
 素直に謝る俺達五人を前に、はぁ、とため息を一つすると、気分も落ち着いたようで、普段の表情に戻った。
「まあいいわ。そんなにいつまでもグチグチ引っ張るようなことでもないし」
「……あのー」
 と、そんな俺達に、何だか弱々しい声で口を挟んでくるやつが。
「俺、よくわからないんだけど……何が起きたんだ?」
「いいんだハチ、お前はお前のまま生きていけ。あと一応すまん」
 こうして冷静にハチの顔を見ると流石に少々申し訳ない気がした。
「というか何でこんなに人数がいるんだよ!? ここへは、俺と相沢さんしか」
「というわけで、これよりハチの強化訓練を始めまーす!」
 ハチの言葉を遮る杏璃の一言に、相沢さん、梨巳さんが満面の笑みで拍手。
「高溝くん、手紙読んでくれてありがとう。ここへ来てくれたってことは、この強化訓練、受けてくれるのよね?」
「え……ええ!? あの手紙、そんなこと一言も」
「書いてあったじゃない。「高溝くんにとって、とても大切なことをしたい」って」
「じ、じゃあ、「高溝くんのことを、本気で考えています」っていうのは」
「勿論本気で考えてるわ、私達。高溝くんの能力、実力」
「なら、「高溝くんは、私にとって凄い大切な人です」っていうのは」
「大切に決まってるじゃない。私達の総大将なんだから、何かあったら困るわ」
「☆▲×%$#@!?」
 石化した。――騙されたというより、期待が外れたショックからだろうか。
「……固まったぞ。これだと練習出来ないんじゃないか?」
「そうね……小日向、手はないの?」
「んー……多分、になるけど」
 俺は石化ハチに近寄り、話しかける。
「なあハチ、落ち着いて考えてみろ。これはチャンスだぞ? 相沢さん、梨巳さん、柚賀さんにいい所見せられるチャンスだぞ? よーく考えてみろ、みんな実はハチの格好いい所が見たくてこの企画を発案したとは思わないか? これに成功した日には」
「全ての女の子が……俺の物に……?」
「可能性がないとは言わないな」
 限りなくゼロに近いが。
「――うおおおおおお!! 男高溝八輔、俺のことを待ってくれている女の子の為にも、やってみせるぜ!!」
 復活した。まあ俺も嘘を言ったわけじゃない。……相沢さん達のことああだこうだ言えないな、俺も。


<次回予告>

「――そういえば、具体的練習案は俺も全然聞いてないんだけど、どんなことするわけ?」
「いくつか実戦風味の練習を考えているわ。まずは基本的なものから。
えーっと……高溝くん、そこから五歩位下がって。――ええ、その位でいいわ」

無事(?)呼び出しも完了し、スタートするハチ強化訓練。
果たしてその内容とは?

「いいじゃないの雄真、あれならクライスに頼ってもいいわ」
「ほう、それは我が主と私に対する挑発か? 柊杏璃。――いいだろう」

そして雄真もやっぱり見ているだけでは終わらない。
これも彼なりの運命なのか!?

「春姫、ついに言ってしまったか」
「え?――あ……その、高溝くん、違うの、あのね、決して高溝くんが嫌いとかそういうわけじゃなくて」

そして訓練は、無事に終わることが出来るのか!?

次回、「ハチと小日向雄真魔術師団」
SCENE 15  「愛なんて一言じゃ語れない」

「お前、本当に信哉のこと好きなのな……」
「止めろ雄真ぁ、気持ち悪いこと言うなああああ!!」

お楽しみに。



NEXT (Scene 15)

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