「おはよう、小河坂くん」
「おす」
 朝、雲雀ヶ崎駅前。もはや定番となった姫榊の駅までの出迎え、更にそこからヒバリ校までの一緒の登校。
 自分で言うのもあれだが、付き合いだしたカップルらしい、微笑ましい光景じゃなかろうか。
「…………」
 微笑ましいカップル、なのだが。――例えば、こうだ。
「……って、なっ、なななないきなり何!?」
「折角だから、手でも繋ごうかと」
 ちょっと手を取っただけで、この過剰反応だ。コンマ数秒で離された。予測してたとはいえちょっとショック。
「嫌か?」
「い、嫌じゃないんだけど……心の準備が必要っていうか……大体登校途中だと誰かに見られるじゃない」
「まあ、生徒会役員にあるまじき行動ではあるか」
 素直に諦め、歩き出す。
「……怒った?」
「いいや」
「ゴメン……その、ホントはわたしも繋ぎたいのよ? でも……」
「恥ずかしい、か」
「うん……別の、もっと、ほら、時なら」
「わかった、私服時のデートの時は繋ごうな」
「ハッキリ全部言わなくていいから!?」
 ――とまあ、こんな感じで、初々し過ぎるのではないか、という日々が今だに続いていたりする。やることはやったのに、というのは男の感覚なんだろうか。まあ、これも俺達らしい、と思えばいい。
 駅前を抜け、坂の前に通るのは俺の家の前。
「お兄ちゃーーんお兄ちゃーーんお兄ちゃーーん!」
「バリエーションが増えてきてるとは聞いていたが、ついにお兄ちゃんお兄ちゃん詐欺が出来たか」
「間近で声聞いて姿まで確認してるにも関わらず詐欺に仕立てあげてるよこの人!?」
 まあ、その、なんだ。――妹の千波が家から出てきた。
「どうしたよお前、こんなに早く起きて」
「失礼だよお兄ちゃん、千波だって毎日毎日寝坊するわけじゃないんだよ、起きようと思えば起きられるんだよ」
「あー、今日は午後から槍が降るのか、鎧兜用意しなきゃなー」
「珍しいのは認めるけどせめて大雪の心配くらいにして欲しかったよお兄ちゃん!?」
 だって本当に珍しかったんだもん。
「それじゃお兄ちゃん、千波は蒼ちゃんを迎えに行ってくるから、残念だけどここでお別れだよ」
「止めてくれ千波、蒼さんはまだ死んでないぞ」
「天国からのお迎えじゃないよお兄ちゃん、というかそれじゃ既に千波が死んじゃってるよ!?」
「……朝一からホントに元気ね」
 呆れ苦笑なのは姫榊。
「それじゃ行ってきまーす! あ、こもも先輩、おはようございまーす!」
「だからその呼び方は止めてってば!?」
 と、反論している間に千波は凄い勢いで蒼さん家へ。あれは反論は聞こえていまい。
「それじゃ俺達も行くか、こもも」
 ドカッ!
「何故に蹴る」
「わざと言ってるのがバレバレだからよ!」
 ――とまあ、こんな感じで、やっぱり少々微笑ましいにも程があるんじゃないか、と思う今日この頃。
 流石にいつまでもこのままじゃなあ……



ステップ・アップ
〜"Workret" presents the after story of "Starlit sky of Memoria"〜



 放課後。今日は生徒会のミーティングもないので天クルの部室に直行だ。何でも今日はちゃんとした会議というか話し合いというかそういうことをするんだとか。ヒバリ祭も終わり、今後の活動についてらしい。
「これで後はこももちゃんだけだね」
 明日歩の何気ない言葉だが――ちょっと俺は聞いてみることにする。
「明日歩は姫榊のことは「こももちゃん」なんだよな」
「当たり前だよ。こさめちゃんがこさめちゃんなのに、こももちゃんだけ姫榊さん、なんておかしいもん。確かにこももちゃん名前で呼ばれるの嫌がるけど、あたしとしてはどうしてそんなに嫌がるのかわからないし」
 最もな話だ。――というよりも明日歩がこももちゃんと呼んでもそこまで頻繁に拒む様子を見てない気がする。要は雰囲気と慣れなのか? 志乃さんも名前で普通に呼んでたし。
「――もしかしてキミたちはまだ名前云々で悩む程度なのか?」
 呆れ顔でそう言ってくるのは雪菜先輩だ。――雪菜先輩はあの一件以来、天クルの活動に参加してくれるようになっていた。流石に毎日はまだ来ないものの、天体観測の日だったり、今日の様に正式にミーティングがある日は必ず出てくれている。原因はわからないが、こさめさんが嬉しそうなのを見る限り、悪い話ではないはず。
「私はそういう話に疎いから断言するつもりはないが、恋人同士になったのなら、名前で呼び合うのが普通だろう。何の躊躇があるんだ?」
 そんな雪菜先輩の言葉に俺が反応するより早く、反応する奴が一人。
「ええ〜!? 洋ちゃんとこももちゃんって、付き合ってたの〜!?」
「――あ、言ってなかったっけ」
「聞いてないよ〜!!」
 そういえば、正式に報告とかはしてなかった気がする。色々あってすっかり伝えた気になってた。
「ちょっと待って、雪菜先輩が知ってるってことは、こさめちゃんも――」
「今では義兄さん、とお呼びしています」
「今初めてそれで呼ばれたぞ!?」
 こさめさんは相変わらず時折ダークだ。
「僕は明日歩クンと同じで初耳だけど、薄々感づいてたから驚きはそんなにないかな」
 ああ、やっぱり感づかれてたか、岡泉先輩には。
「特に興味ありませんので」
 まあ、これはこれで蒼さんらしいか。
「にしても、あれだけのことをしておいて、名前で呼べず、友人に報告もない。――そんなのでこの先やっていけるのか?」
「……おっしゃる通りで」
 朝から考えていたが、本気で考えないとな。
「あれだけのことをって、こももちゃんと一体何してるの〜!?」
 なんかよくわからない勘違いしてるやつがいるし。
「既に巫女プレイ辺りはしているかもしれませんね」
「してねえ!?」
「つまり、私やこさめもあわよくば狙っていたわけか」
「狙ってないですから!! っていうか雪菜先輩、目がマジなんですけど!! 怖いんですけど!!」
 その前にこさめさんも雪菜先輩も何があったか知っているのに。
「要するに先輩はただの変態ということですね。まあ、知ってましたが」
「知ってたって何!?」
 ここぞとばかりに俺を責める蒼さん。――目が嬉しそうなのは気のせいか?
「洋ちゃんの裏切り者〜!!」
「何故!?」
「小河坂さん、もしかして本命は明日歩さんで姉さんのことは遊びだったんですか……?」
「誤解だっ!! 明日歩とは何もない!!」
 収集がつかなくなってきた、その時。
「ごめんなさい、遅くなって」
 なんとまあ見事な程のタイミングで姫榊が部室に来てしまった。
「こももちゃんの裏切り者〜!!」
「いきなり何!?」
「安心してください姉さん、小河坂さんの罪はわたしと雪菜先輩で裁きます」
「前置き無しでそんなこと言われても安心しようがないんだけど!?」
「というか俺何の罪もないから!!」
「今日の天クルのミーティングは部内の恋愛禁止法の設立について話し合いたいと思いまーす!!」
「おい、今後の活動目標に関してだろ!?」
 というか禁止前提か。――と、そんな明日歩の提案は一体何を揉めていたのかを姫榊に知らせるには充分だったようで、
「コガヨウ……」
 怒りの矛先を俺に向け始めた。
「待て、俺は悪くない!」
「そうか? 私が感じる所では結局キミが曖昧にしているのが悪いようにも思えるが?」
「ああもう、曖昧にしてるつもりも今後するつもりもありません! 俺は姫榊の事が好きで大切ですし、これからもずっと大切にしていくつもりです!!」
 …………。
「……あれ?」
 急に部室が静まり返って……?
「うわぁ……そこまでハッキリ言われるとあたしとしても何だか……」
「まあ、小河坂クンらしいとは思うけどね」
「バカップル、ウザ」
「もはやプロポーズでしたね」
「極端だな」
 各々が各々の表情で俺を見ていた。――いやあ、その。
「姫榊、顔真っ赤だぞ」
「だっだだ誰のせいよ!?」
 ここまでくるともう止まれない。いっそのこと、ちゃんと話をしておくべきか。
「というわけで、俺はそこまでの心意気があるから、徐々にステップアップしていきたいと思うわけだ」
「ステップアップ……?」
「とりあえず、名前で呼び合うところから」
「……嫌がらせ?」
「俺は到って真剣だ。いつまでも名字で呼び合うわけにもいかないだろ?」
「それは……そうだけど」
 俺が本気なのがわかったのか、少し申し訳なさそうな顔になる。
「要は慣れだと思う。例えば……明日歩、呼んでみてくれないか?」
「こももちゃん」
 …………。
「ほら、他の人に呼ばれた時より動揺が少ない。明日歩は知り合った時からそうなんだろ?」
「さっき洋ちゃんにも言ったけど、こさめちゃんがこさめちゃんだから、こももちゃんはこももちゃんだよ」
「な?」
「言いたいことはわかるけど……」
「何も焦ることはない、徐々にでいいんだ。俺の他にも……こさめさん、呼んでみてくれないか」
「義兄さん」
「そっちじゃなくて!!」


 朝の雲雀ヶ崎駅前。いつも通りの時間の待ち合わせ。
「おす、こもも」
「お、お、おお、おはよう……その、洋」
 名前で呼ばれる他に、俺を名前で呼ぶことにも恥ずかしさがかなり生まれることがわかった。昨日から名前で呼び合うと決めたのはいいのだが、かなり会話がぎこちなくなった。
「お前それだとまったく俺を呼んでるように聞こえないぞ」
「わ、わかってるわよ……恥ずかしいんだから仕方ないじゃない」
 慣れれば大丈夫と思ったが慣れてくれるのにこのままじゃどれだけ掛かるやら。
「いっそのこと、一気に慣れてみるか? こ〜もも〜こ〜もも〜た〜っぷり〜こ〜もも〜♪」
 ドカッ。
「何故に蹴る……ってすいません、調子乗りすぎました」
「わかればいいのよ」
 流石にこの歌はまずかったか。――そんなこんなで通るのは我が家の前。
「お兄ちゃーーんお兄ちゃーーんお兄ちゃーーん!」
「へえ、あのスーツの人が千波のお兄ちゃんか。随分歳が離れてそうだけど」
「通りすがりのサラリーマンを勝手に千波の新しいお兄ちゃんにしてるよこの人!? 千波のお兄ちゃんは、目の前にいるお兄ちゃんただ一人だけなんだよって言おうとした瞬間に千波の視界から走って消えるのはどうかと思うよお兄ちゃん!?」
「チッ、相変わらず反射神経のいいやつめ」
「ホント、相変わらずよね、あなたたち……」
 苦笑するこもも。まあ確かに、姫榊姉妹とは実に違うだろう。
「あっ、こもも先輩! おはようございまーーす!!」
「だから、その呼び方は――お、おはよう、千波さん」
 ギリギリセーフだが、笑顔が何処か引き攣っていた。
「それじゃお兄ちゃん、千波は蒼ちゃんを迎えに行ってくるから名残惜しいけどここでお別れなんだよ、寂しいだろうけど我慢してねお兄ちゃん」
「ああ、寂しくなるな。お前にこの先二度と会えないのかと思うと」
「今生の別れじゃないよお兄ちゃん!?」
 そんなこんなで千波とも別れ、再び登校開始。――そういえばあいつまた普通の時間に起きてたな。これは本気で鎧兜を用意した方がいいかもしれない。
 と、そんなことより気になることがあったので、素直に提案してみることにした。
「なあ、辛いなら、止めてもいいぞ」
「え……?」
「正直、そこまで苦労するなんて思ってなかったからさ。そこまで辛いなら俺も諦めるよ。お前を苦しめてまでやりたいことじゃないしな」
 何も時間が決まってるわけじゃない。ちょっと俺も焦りすぎたかもしれない。
「……やだ」
「えっ?」
 その声は、少し小さかったが、ちゃんと俺の耳に届いた。
「わたしだってこのままでいいなんて思ってないし……ホントは当たり前のように名前で呼び合いたいの……頑張るから、だから、その、諦めるとか」
 …………。
「ごめん、今ここで抱きしめていいか?」
「だ、駄目に決まってるじゃない、通学路だし、人沢山いるし」
「そのくらい今のお前が可愛かったってことだ」
 普段強気なだけに、ああいう瞬間は何と言うか、ヤバイものが。
「何も別れるって言ってるわけじゃないんだから、そんなに思い詰めるな」
「……うん」
 そんなこんなで校門を潜り、昇降口、下駄箱に差し掛かった時――事件は起こった。
「あっ」
「ん?――あ」
 見てしまった。――こももの下駄箱に、一通の手紙が入っていた。高確率で、その……ラブレターだろう。
「…………」
「…………」
 気まずい空気が二人の間に流れる。どうしよう。
「お、オホン」
 わざとらしい咳ばらいをして、とりあえず俺は自分の下駄箱を開けた。――が。
「え」
「あ……」
 俺の下履きの上に一通の手紙が。ピンク色の可愛らしいそれは……なんだ、その。少なくとも果たし状とかではないと思う。
「…………」
「…………」
 更に気まずい空気が、俺達を襲う。まさか同日に二人揃って貰うとは。
「……時間もないことだし、昼休みまでにお互い気分を落ち着かせて、それでちゃんと話そう。それで……いいよな?」
「……うん」
 お互いの教室へ動く。――今日の午前の授業、きっとあまり頭に入らないんだろうな……


「結論から言えば、ラブレターだった」
 そして昼休み。こももの手作り弁当をつつきつつ、先に切り出したのは俺だった。
「お前のも、そうだろ?」
「うん。――洋のクラスの戸波(となみ)くんだった」
「戸波か……」
 思い浮かべてみる。――結構なイケメンだ。成績や性格も悪くなく、女子に人気があった気がする。
「よくよく考えたらお前、モテて当然なんだよな……」
 俺と戸波の基本スペックを比べてみても、成績はともかく他で勝ち目がない。
「……なんか、軽く凹んだ。俺とお前って、釣り合い取れてるのか?」
「……釣り合いとかそういうの関係ないじゃない。わたしが好きなのは洋だけなんだから」
「そうだな、俺こもものこと誰よりも好きでいるつもりだし」
「ふっ、普通にそういうことをいきなり面と向かって言わないでくれる!?」
「んな理不尽な……」
 今の流れは言えというサインじゃないのか。
「そっちは、誰からだったの?」
「――こもものクラスの、三好(みよし)さんっていう女子」
「三好さん……」
 こももの表情が複雑な物に変わった。
「俺、その三好さんって知らないんだけど、どんな子?」
「人当たりのいい優しい子。顔も可愛いし多分……人気もある」
「そっか……」
 嬉しいは嬉しいが、やはり複雑だ。
「……やっぱり」
「うん?」
「やっぱり……モテるのよね、洋は。寄せ書きにも二人から好きでしたって書かれてたし」
「だから、あれは――」
「時々、不安になるのよ。洋がわたしの傍にいてくれたのはわたしが苦しんでたからで、悪夢から解放されたら離れていくんじゃないかって。もっと他の素敵な女の子の所に行っちゃうんじゃないかって。そんなわけないって思ってるのに、どうしても――不安に、なるのよ」
「――ああっ、もう!!」
 俺はそのままこももを無理矢理抱き寄せ、素早くキスをして、素早く離す。
「な……だだだから、人目があるところでは――」
「我慢出来なかった。というか最悪見られてもいい。だって俺達、付き合ってるんだぜ? 確かにおおっぴらにすることはないけど、必要以上に隠すこともない」
「あ……」
「俺、三好さんに会って、ちゃんと断るから。こももと付き合ってるって、ちゃんと言うから。俺、こももと付き合えてること、誇りに思ってる。人に自慢出来る。――それで、いいよな?」
「洋……」
 何度だって伝えられる。誰にだって伝えられる。俺はこもものことが好きで、この先ずっと大切にしていくつもりだ。恥じることなんてない。凹むくらいならその分頑張ればいい。きっと出来る。こももが俺のことを好きで居続けてくれる限り、俺はその気持ちに応えられる。
「……わたしも」
「うん?」
「わたしも……言うから。洋のことが好きだから、洋と真剣に付き合ってるから、あなたとはお付き合いできません、って。――自慢、出来るから。誇りに、思ってるから。誰よりも、あなたのこと、想ってるから」
「……ありがとな」
 わかってはいるつもりだったが、言葉で直接耳にすると嬉しい。
「――洋」
「うん?」
 名前を呼ばれ、顔を向けた直後――
「……人目がつく所ではやっちゃまずいんじゃなかったのか?」
 触れる程度のほんの一瞬だったが、キスをされた。
「一瞬だったらわからないんでしょう? それに……我慢、出来なかったから」
「……ははは」
 ステップアップ……って、考えて、いいんだよな?


 日曜日。――すっかり見慣れた鳥居をくぐり抜ける。
「遅いわよ、コガヨウ」
「……あれか? もう言わないと気が済まないのか? それ」
 無論、遅刻はしていない。
「わたしの気持ちを待たせたじゃない」
 そういうこももの顔は穏やかだ。俺も自然と笑みがこぼれる。――今日はデート。なので迎えに来た所存。
「姉さんは小河坂さんの前では乙女なんですよね、相変わらず」
「こさめ!?」
「お早うございます、小河坂さん。――駄目ですよ、姉さんの気持ちを待たせたりしたら」
「お早う、こさめさん。――うん、大丈夫。本当には待たせたりしないから」
 普通に挨拶を交わす俺とこさめさんの横のこももは、怒りと恥ずかしさが入り交じってどうしていいかわからない、といったところか。
「何でこさめがいるのよ!?」
「微笑ましい姉さんを弄りに」
 開き直ったよこの人。
「今日はお二人でデートですよね?」
「うん、まあそんなとこ」
「では、こちらを姉さんのポケットに」
 消しゴム位の大きさの何かをこさめさんは俺に渡してきた。
「? 何これ」
「盗聴器です。これさえあれば姉さんが小河坂さんと二人きりの時にしか出さない甘えた声がこちらでも聞け――」
 グシャッ。
「お、出たなクラッシャー」
「破壊するに決まってるでしょ!?」
 その破壊の速さ、神の如く。
「折角飛鳥さんにお借りしてきたのに……しょんぼりです」
 飛鳥のかよ。カメラが相棒だから、今頃何処で「友よぉぉぉぉぉ!?」とか叫んでるかもしれない。
「馬鹿やってないでさっさと行くわよ」
「ああ」
 当たり前のように手を取ると、当たり前のように握り返してきた。――ほんの数日前からは考えられない進歩だ。
 俺達のスピードで。
 俺達なりのステップアップを。
 これからも、横にいる大切な人と一緒にしていければいいと思う。
「楽しんできて下さいね、姉さん義兄さん」
「うん、楽しんでくるよ、我が愛しき義妹よ」
 …………。
「――って、痛っ、痛いよお前!? 手繋ぐとかじゃなくて俺の手が破壊されるよ!?」
「コガヨウ……あなた、こさめと何があったのかしら?」
「いつも弄られるから軽く乗ってみただけだっての!!」
「小河坂さんは、巫女プレイより義妹プレイがお好きだったんですか?」
「こさめさん、事態を悪化させる発言は控えて……ぐおおおおおお!?」
 俺の手が、変形、変形していく!?
「こもも、落ち着くんだ!! このまま続けるとデートの間中手が繋げなくなるぞ!? それでもいいのか!?」
「いいんじゃない、別に」
「いいのかよ!?」
「だって……手が繋げないなら、腕を組めばいいんだし」
「……えっ?」
 …………。
「――って、ちょっ待てお前、自分の発言が恥ずかしかったからって俺の手に八つ当たりは……ぐおおおおおお!?」
 どうやら今日のデートは、本当に腕を組むことになりそうだ。――また一つ、ステップアップ、かな。


さて皆さんこんにちは。筆者のワークレットです。

連載中の「はぴねす!」以外のssを……シリーズの最新作は、
「星空のメモリア」、こももルートアフターのssをお送りしてみました。
わかってます、需要がないことくらい(爆)。
私自身も何でこれが書きたくなったのかわかってない位ですからねー。

本編こももルートだと割合的にシリアスな話が多く、微笑ましいシーンに入った直後に真面目な話をしたり、
そういう意味では何処か物足りない部分もあったので書いてみたんだと思います。
最後まで苗字ってお前ら可笑しいだろ、がテーマでした(笑)。
書いてから私はこの手のほのぼの系統が書くの下手だと気付いたのはここだけの話。

……しかし書けば書くほどこももってこんなキャラだっけ、という疑問が私を襲うわけで(苦笑)。
修行が足りんなあ。
更に言ってしまえば未だ明日歩とこももしかクリアしてないのに書いてる私もどうなんだろう。
私自身ロリっ子はあまり攻略する気になれないので蒼さんとか千波とか面倒なんですよ(おい)。

公式サイトもいきなり消えたことだし(何でしょうねあれは)、ファンディスクの可能性もゼロということで
(↑知らない間に移転というか移籍というか権利移動というかしてました。ますます何でしょうねあれは?)
そういう意味では楽しめる方がもしかしたら何処かにいるかもしれません。
出来れば大らかな気持ちで読んで下さい(笑)。

ではでは、感想等を頂けるとありがたいですね。ワークレットでした。



BACK (SS index)